文部科学省の第4期教育振興基本計画(令和5年6月16日閣議決定。リンク:https://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/index.htm)を読んで、感じたことや考えたことを言語化したいと思う。
書きたいことが多いので、ざっくり流れを記載する。
- 社会の現状と将来の予測
将来の予測が困難な VUCA と言われる時代
グローバル化やデジタルトランスフォーメーション - どのような教育が必要なのか?
「自立」、「協働」、「創造」という理念
「正解(知識)の暗記」、 「正解主義」への偏りから脱却
多様な才能・能力を生かす教育
- 具体的な目標設定
イノベーションを担う人材育成
➀社会の現状と将来の予測
そもそも教育振興基本計画とは?
教育振興基本計画は、教育基本法(平成18年法律第120号)に示された理念の実現と、我が国の教育振興に関する施策の総合的・計画的な推進を図るため、同法第17条第1項に基づき政府として策定する計画です。
引用:文部科学省HP(https://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/index.htm)
これに従い、浜松市が浜松市教育総合計画(https://www.city.hamamatsu.shizuoka.jp/somu/sesaku/sougoukeikaku/dai4jisakutei.html)を作成することとなっている。その為、教育振興基本計画は今後の教育が進むべき方向性を示していると考えている。
さて、本題の社会の現状と将来の予測と目指す未来について、「(3)社会の現状や変化への対応と今後の展望(P5)」に記載がある。将来の予測が困難なVUCAの時代ということ、AI やロボットの発達 により求められる能力が変わってくることが記載されており、同じ認識であることを確認できた。原文は、リンクから確認してほしい。
ちなみに、「VUCA」とは、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の頭文字を取った造語である。簡単に言うと、将来を予測することが難しい時代ということである。例えば、数年前から考えた時に、スマホの進化やChatGPTの進化は予測できただろうか?(いやできない)。新型コロナウイルスの発生も予測できなかったことの一つである。
➁どのような教育が必要なのか?
第2期教育振興基本計画において掲げられるとともに、第3期教育振興基本計画においてもその理念が継承された「自立」、「協働」、「創造」については、「自立」と「協働」は個別最適な学びと協働的な学びの一体的充実に対応する方向性であり、「創造」は主体的・対話的で深い学びの視点からの授業改善を通じてもたらされるものである。これまでの計画の基軸を発展的に継承し、誰もが地域や社会とのつながりや国際的なつながりを持つことができるような教育を推進することで、個人と社会のウェルビーイングの実現を目指すことが重要である。
引用:教育振興基本計画(P10 (2)日本社会に根差したウェルビーイングの向上)
AI やロボットによる代替が困難である、新しいものを創り出す創造力や、他者と協働しチームで問題を解決するといった能力が今後一層求められることが予測され、こうした変化に教育も対応していく必要がある。
引用:教育振興基本計画(P11 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成)
(主体的・対話的で深い学び、アクティブ・ラーニング、大学教育の質保証)
○ 「令和の日本型学校教育」答申において指摘されている「正解(知識)の暗記」、「正解主義」への偏りから脱却し、学びの動機付けや幅広い資質・能力の育成に
向けて「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善を行っていくことは、社会の持続的な発展を生み出す人材養成において不可欠である。
○ 学習者を主体として、他者との協働や課題解決型学習などを通じ、深い学習を体験し、自ら思考することを重視する考え方は、初等中等教育のみならず、高等教育や生涯学習・社会教育においても重要である。
引用:教育振興基本計画(P12 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成)
(多様な才能・能力を生かす教育)
○ 近年、海外において多様な才能を有する人物のアイデアにより非連続なイノベーションが創出され、企業価値や行政機能が高められた事例が注目されている。他方、我が国においては、これまで学校教育において一人一人の子供たちの多様な才能をどのように伸長していくのかという議論が十分行われてこなかった。子供たち一人一人の多様な才能・能力を埋もれさせず、その才能を伸ばしていくための教育を行っていくことは重要な課題である。これまでの同一年齢で同一内容を学習することを前提とした教育の在り方に過度にとらわれず、個々に最適な学びを提供するとともに、正解(知識)の暗記や画一的な教育による弊害を排し、同質ではなく異質なものとの融合こそがイノベーションを生み出すとの発想の下、多様な才能・能力を生かす教育を行っていくことが求められる。
引用:教育振興基本計画(P12 ① グローバル化する社会の持続的な発展に向けて学び続ける人材の育成)
ここまで抜粋が続いたが、必要な学びをまとめるとこういうことであると考える。
- 個別最適な学び
- 協働的な学び
- 新しいものを創り出す創造力
- 他者と協働しチームで問題を解決する
- 「正解(知識)の暗記」、「正解主義」への偏りから脱却
- 主体的・対話的で深い学び
- 深い学習を体験し、自ら思考することを重視する
- 多様な才能・能力を生かす教育
➂具体的な目標設定
目標5 イノベーションを担う人材育成
複雑かつ困難な社会課題の解決や持続的な社会の発展に向けて、新たな知を創り出し、多様な知を持ち寄って「総合知」として活用し、新たな価値を生み出す創造性を有して
既存の様々な枠を越えて活躍できる、イノベーションを担う人材を育成する。
【基本施策】
○探究・STEAM 教育の充実
・学習指導要領を踏まえ、児童生徒が主体的に課題を自ら発見し、多様な人と協働しながら課題を解決する探究学習や STEAM 教育等の教科等横断的な学習の充実を図
る。
・「社会に開かれた教育課程」の実現に向けて、普通科改革や先進的なグローバル・理数系教育、産業界と一体となった実践的な教育等を始めとした高等学校改革を通
じて、地域、高等教育機関、行政機関等との連携を推進する。
・生徒の探究力の育成に資する取組を充実・強化するため、先進的な理数教育を行う高等学校等を支援するとともに、その成果の普及を図る。
・探究・STEAM・アントレプレナーシップ教育を支える企業や大学、研究機関等と学校・子供をつなぐプラットフォームの構築や、日本科学未来館やサイエンスアゴラ等の対話・協働の場等を活用した STEAM 機能強化や地域展開等を推進する。
引用:教育振興基本計画(P50 Ⅳ.今後5年間の教育政策の目標と基本施策)
探究学習や専門性の高い教育を行うことを中心に書かれていた。その一方、創造力については具体的な目標や指標が示されていなかった。
専門性の高い教育は、創造する力における弊害になる場合があるのではないかと考える。専門性が高いと、その専門的な部分に考えが凝り固まってしまうバイアスに陥りやすいのではないかと考える。だから、その分野の全くの素人がその分野でイノベーションを起こしやすいと言われるのである。だからと言って、専門性が高いのが問題ではなく、専門性バイアスにかかるのが問題であり、バイアスにかかりやすいと自覚できていれば、そのバイアスから抜けることもできると考える。
また、「深く知る」専門性と「つなげる」創造性は、別の学びが必要であると考える。「つなげる」創造性については、代表メッセージで記載しているので見てほしい。